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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(れ)1627号 判決

本籍並住居

愛知県中島郡祖父江町大字祖父江字堤内二六番地

長崎戦市

明治三七年一一月八日生

本籍並住居

愛知県中島郡祖父江町大字祖父江字高熊一七番地

ゴム靴修繕業

岡本善一

明治三一年五月二五日生

右に対する常習賭博各被告事件について昭和二五年六月一二日名古屋高等裁判所の言渡した判決に対し各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は刑訴施行法二条に従い次のとおり判決する。

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人佐藤正治の上告趣意について。

所論原判決の認定事実によれば、被告人等はいずれも常習として数名乃至十数名を相手に、判示日時、判示場所で金銭を賭し花札を使用して俗に名古屋花、後先、又はハンカンと称する賭銭博奕をなしたものたることが明確にされている。そして賭博罪は二人以上で偶然の事情により勝負を決しこれに財物を賭けることによつて成立するのであり、その相手方が特定の人物であること及びその員数の如きは必ずしも賭博罪成立の要件ではない。また、花札を使用して行われる俗に名古屋花、後先、又はハンカンと称する賭銭博奕をしたと判示する以上、賭博罪の判示として欠くるところがないからそれ以上詳細にその方法内容を判示しなくとも差支えないのである。されば原判決の判示事実は、たとい所論のように、被告人等のなした各賭博行為毎にその相手方の員数及びその氏名を明確にせず、また、賭博の方法内容を単に俗に名古屋花、後先、又はハンカンと称する賭銭博奕と判示したに過ぎなかつたとしてもなお賭博罪の具体的判示として何等欠くるところはない。原判決には所論のような違法はなく論旨は採用に値しない。

よつて旧刑訴四四六条に従い主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

検察官 松本武裕関与

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 斎藤悠輔)

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